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31. 夜空を切り裂く咆哮

last update Last Updated: 2025-11-19 11:41:11

「いやいやいや!」

 長老は必死に手を振った。

「あんたはそう気軽に言うが、戦争するかどうか決めるのは魔王なんだぞ!?」

 唾を飛ばしながら力説する。

「魔王が! 人間に! 貴重な秘薬の提供など! 許すわけがない!」

「いや?」

 ゼノヴィアスは首を傾げた。

「許すが?」

 きょとんとした顔。

「あ、あんたの意見は聞いてない!」

 長老は苛立ったように叫んだ。

「魔王が! 魔王がどう考えるかじゃよ!」

「だから」

 ゼノヴィアスは、さも当然のように。

「余が良いと言っている」

「……へ?」

 長老の口が、ぽかんと開いた。目を細め、ゼノヴィアスをじっと見つめる。

 そこにいるのは、どう見ても二十代の精悍な青年。

 ちょっと態度は尊大だが、まあ若者にはよくあること。

 でも――――。

「あの……魔王様が特別に大丈夫って言ってくれてるんですよ!」

 シャーロットが慌ててフォローした。

「あんた……」

 長老の指が、ゆらゆらとゼノヴィアスを指差した。

「魔王?」

 まるで、信じられないものを見るような目。

「余を指差すな!」

 パシン!

 ゼノヴィアスが不機嫌そうに、長老の指をはたいた。

「し、失礼……」

 長老は混乱したまま、シャーロットの袖を引っ張った。

「ちょっとちょっと、こっち来て……」

 テントの隅へと引っ張っていく。

「はぁ……」

 シャーロットは苦笑いを浮かべながらついていった。

「彼は……」

 長老が小声で囁く。

「魔王の何なの? 息子? 弟? それとも使

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